円形脱毛症はくり返す?|MBC麻布十番(皮膚科)

円形脱毛症は再発する病気

円形脱毛症は状況が改善しても、完治するまでには時間を要し一度治っても、再発を繰り返すことがあります。円形脱毛症の再発の特徴をご紹介します。

症状が落ち着く回復期の再発

円形脱毛症は、特に小さい脱毛斑は自然に治癒することが多いのですが、広い範囲で毛が抜けていると脱毛が長引き治療が必要になる例も多々あります。治療が必要となり、治療をしていくと脱毛部分の毛穴から髪の毛が生えてくるようになります。ですが、いったん髪の毛が生えてきたからといってそのままどんどん回復していく部分もあれば、回復に時間がかかる部分があったり、発毛があってもまた脱毛を繰り返り返す場合があります。つまり、髪の毛が生えてきたからもう大丈夫と思って治療をやめてしまうと、また、脱毛を再発する可能性があるのです。

初発と再発で脱毛症の型が変わり進行する

円形脱毛症は初発の場合、単発であることが多いです。単発型が一旦治った時にその後も単発型が起こるとは限りません。再発したときは全頭型になったり多発型になったりすることも考えられるのです。初発の単発型は治療をしなくても放っておけば治ることがあるため、また放っておけば治るかもしれないと考えて放置した結果、多発型や全頭型に移行してしまい、単発型の時よりも進行してしまうことが考えられます。

治療効果がないと思い込んでしまい治療をストップすることによる再発

円形脱毛症の治療をすると、必ずしも黒い毛が生えてくるというわけではなく、白い毛が生えてくることがあります。円形脱毛症を引き起こす原因には自己免疫疾患といい、自分の細胞を自分の免疫が攻撃することによって引き起こされると考えられています。この自己免疫の攻撃ですが、髪の毛の黒色を作り出すメラノサイトを攻撃する可能性があるとも考えられているのです。そのため、回復期の過程ではメラノサイトの活動が低下して一部分で白髪が生えてくる可能性が高いといえます。白色は黒色と違って目立ちにくいので白い毛が生え始めても髪の毛が生えてきているということが分からず、治療の効果が出ていないと考えてしまい、治療をストップしてしまう方もいらっしゃるようです。これによって再発をしてしまう可能性があり、実際に、白髪が生えてきたことで治療がうまくいっていないのではと悩み、医療機関に相談に来る方もいらっしゃいます。

円形脱毛症の考えられる原因の種類

円形脱毛症の原因は完全にはわかっておらずさまざまな説が考えられています。ここでは現時点で分かっている円形脱毛症の原因について解説していきます。

自己免疫疾患

円形脱毛症の最たる原因として考えられているのがこの自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは本来風邪のウイルスなど外から異物が体内に入ってきた時に自分の免疫細胞でその外来からの異物を攻撃することによって体外へ追い出すシステムです。これが何らかの原因で自分の身体の細胞を敵と認識して攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。
円形脱毛症も成長期の毛包が免疫系のひとつであるリンパ球の攻撃を受けて壊されてしまうことによって発症します。なぜ、自分のリンパ球が自分の毛包を攻撃してしまうのか、その理由は完全には分かっていません。

アトピー素因

アトピー素因がどのように脱毛の機序に関連しているかは不明とされているものの、アトピー素因が円形脱毛症に関係しているということが報告されています。実際に日本皮膚科学会が行った踏査によると、円形脱毛症を発症した方の約4割の方が気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のアトピー性の疾患を合併していたという報告があります。また、病理組織学的にもアトピー素因ありの方では、毛包周囲への免疫細胞の浸潤の割合が高くなっており、機序は不明としながらも、関連している可能性が高いということが考えられているのです。

遺伝

円形脱毛症を発症している方の約2割程度に血縁の家族に円形脱毛症の患者さんがいらっしゃることが分かっています。そのため、円形脱毛症は遺伝する可能性高いことが分かっています。また、円形脱毛症そのものが遺伝するというよりも円形脱毛症になりやすい素質が遺伝しているという可能性が推測されているのです。

過剰なストレス

円形脱毛症といえばストレスを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。

精神的なストレスを受けると、それに抵抗するために交感神経が優位にはたらきます。心肺機能を早めたり血管を収縮する働きがあり、その状態が長く続くと、交感神経に異常をきたします。その結果、特に精神的ストレスを強く長く受けていると、血管を収縮している時間が長くなり、頭部への血流も悪くなり、毛根へ栄養がいかなくなる可能性があります。ですので、そのストレスを受けたタイミングと脱毛のタイミングが関連しているわけではありません。また、自己免疫疾患そのものがストレスによって誘発されることもあるため、ストレスそのものが、円形脱毛症の原因となるのではなく、ストレスは円形脱毛症の誘因となる可能性が考えられています。

円形脱毛症の代表的な治療法

円形脱毛症となった場合にはどんな治療を行うのでしょうか。ここでは、皮膚科で一般的に受けることのできる代表的な治療方法をご紹介します。

ステロイド局所注射療法

外用薬でも使用するステロイド剤を脱毛部分に直接注射をする治療方法です。単発型であり、脱毛部分がせまいこと、ステロイド外用治療に反応しない人、経過が長引いてはいるが重症例ではない脱毛症に行われる治療法となります。注射した部分にはしっかりと発毛をしてくるものの、それ以外の部分の発毛が望めないため脱毛の範囲が広い方は不適合と考えられています。
また、頭皮に注射をすることによる痛み、注射をした部分のへこみが出る可能性があるため、この治療の適応な方として該当されなければ治療として積極的に行われるものではありません。

ステロイド外用療法

単発型の円形脱毛症や多発型ではあるものの脱毛部分が融合して大きくなっていないタイプの円形脱毛症に対しては高い効果が得られることが分かっており、円形脱毛症の初期の方の使用に用いられています。さらに全頭型や汎発型のタイプの円形脱毛症の方でも、臨床試験では、高い効果が得られていることから、円形脱毛症の治療薬の中でも数少ないすべてのタイプの円形脱毛症の治療に使うことができるということが特徴です。ですが、塗布部分に副作用としてざ瘡や毛包炎があり、また長期的に使用すると皮膚の萎縮や血管拡張、陥凹をきたすことがあるので長期的に使用することはできません。

局所免疫療法

局所免疫療法とは、SADBE、DPCPといった特殊なお薬を脱毛部分に塗布してかぶれを引き起こすことで発毛を促す治療方法です。初めに高めの濃度で薬剤を塗布した後は低濃度の薬剤を1~2週間に1回のペースで塗布をしていき、発毛が起こってからも約1ヶ月に1回程度はお薬を塗布する必要があります。かぶれを引き起こすため、かゆみや赤みなどの症状が見られることが特徴です。この治療法は、全頭型や多発型など重症例の第一選択の治療法として用いられます。ですが、薬品が医薬品ではなく試薬を使用しているため、保険適用外の治療法です。有効率は60%以上であり、難治例の円形脱毛症を含む現在最も有効な円形脱毛症の治療法となります。

ミノキシジル外用療法

ミノキシジルとは発毛効果が期待でき、且つ抜け毛の進行抑制の両方に効果がある外用薬で、毛乳頭細胞を刺激して毛母細胞の増殖を促す成長因子を出させるというメカニズムのお薬です。世界90ヵ国以上で承認されて、使われており特に海外での診療実績が高いものです。ですが、頭皮全体の25~49%脱毛している症例には無効であるとの考え方もありますので、単発型や多発型に対して内服薬との併用で用いることが一般的であり、全頭型などには用いられることが少ないという特徴があります。保険適応外の治療になります。

抜け毛が増えたと感じたら皮膚科に相談

最近抜け毛が増えてきたと感じたらまずは皮膚科に相談してみましょう。例えば起床したときに枕に落ちている髪の毛の量が増えた、シャンプーで髪の毛がごっそり抜けるようになったという場合には、脱毛症の可能性もゼロではありません。また、髪の毛は鏡で見ても横や上、後ろは自分で見ることが難しいため、周期的に身近な人に毛が抜けている部分があるかどうかチェックをしてもらうとよいでしょう。
早期に治療を受けることで回復も早くなり、治療期間も短くて済みます。特に昔円形脱毛症になったけれど自然に治ったという方は次も自然に治るとは限らず、経過が長引き悪化すれば治療の時間や費用もかさみます。円形脱毛症は再発する病気ですので、抜け毛が増えていると感じた方、特に以前円形脱毛症になったことのあるという方はなるべく早く皮膚科を受診してください。

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監修医師

立花 義浩

資格
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
麻酔科標榜医
日本医師会産業医
日本体育協会スポーツドクター
経歴
北海道大学精神医学教室、北海道大学救急医学教室、東京慈恵医大救急医学教室にて修練を重ねた経験をもつ。また、銀座にて美容皮膚科医として、都内皮膚科クリニックにて、皮膚科医としての勤務経験をもつ。