化膿したニキビの原因と対処法|MBC麻布十番(皮膚科)

ニキビの膿とは

ニキビが膿むというのはどのような状態なのか、なぜニキビが膿んでしまうのかその原因についてまずは詳しくお話しします。

ニキビを放置することで黄白色の膿を伴う場合がある

赤く炎症を起こしたニキビを放置していると、その炎症がさらに進んでいき、黄白色の膿を伴うことがあります。この膿の色から黄ニキビと呼ばれることもあります。この状態が最もニキビの中でも重症な状態であるといえるのです。ですが、膿が出てきているということはニキビが終息に向かっているサインであるともいえるので、いじらずに経過を見ていくことがおすすめです。膿はニキビから流出してきて、皮膚に付着するということもありますし、流出せずにニキビの表面から黄白色に見えているだけの場合もあります。

膿の正体は免疫機能のひとつである白血球

ニキビに膿ができてしまう正体は免疫細胞のひとつである白血球であると考えられています。ニキビの炎症が進むと、この炎症に反応して、ヒトの身体は白血球のひとつである好中球を分泌します。好中球は細菌を貪食し、殺菌して無害化する役割を持ち、この作用を利用してアクネ菌を貪食して無害化していきます。貪食すると好中球は死滅してしまうのですが、この好中球が死滅したものが膿となります。つまり、膿が出ているという状態は、白血球がアクネ菌と戦っている証拠であるといえるのです。この膿はどんどんたまっていくわけではなく通常は毛穴から排出されていきます。炎症が起こったタイミング、つまり、赤ニキビの段階から、白血球は血液にのってニキビの部分で戦いを始めるため、この戦いによって炎症がひどくなります。ニキビに硬結ができた後に膿ができるという経過をたどる方が多いかと思いますが、これは、ニキビが戦って激しく炎症を起こしてニキビが硬結し、その後に死滅した好中球が排出されるためであるからなのです。

化膿する前にニキビを治すことが大切

ニキビが化膿してしまうと、皮膚の下ではニキビの原因菌であり炎症を引き起こしているアクネ菌が作りだしたリパーゼという酵素が炎症によって薄くなった毛包の壁を壊していき、炎症を起こす物質を毛包の外にまで広げています。この状態にまで達してしまうと、ニキビ跡を形成する可能性が高くなるのです。実際にアメリカで行われた研究によると、赤いにきびや膿をもったにきびの8.2%が3ヶ月以内にニキビ跡になるというような結果も出ています。化膿したニキビは医療の力を借りることで、短期間で完治させることができる一方、ニキビ跡にまでなると、医療の力を借りても完治までには時間を要するため、化膿する前にニキビを治してしまうことが大切なのです。
 

ニキビの膿がでていく方法

ニキビの膿は、一般的には自然に排出されるのですが、どのように排出されていくのでしょうか。ニキビの膿がどうやって出ていくのかを解説していきます。

少量の膿であれば自然に吸収される

ニキビによってできた膿はすべてニキビの毛穴より排出されるというわけではありません。少量の膿でしたら外に排出されていかずに、自然に体内へ吸収されていくこともあります。膿が吸収されていけば、そのままニキビは快方に向かっていきます。吸収を促すために特別自分で処置をするなどといった必要はありません。

大量の膿によりニキビ自体が破裂する

膿が排出されることなく、どんどんニキビの中で膿が溜まってしまうと、その膿が溜まったニキビが破裂をしてしまいます。ニキビは毛穴の病気であり、毛穴にある皮脂腺から分泌された皮脂が詰まることによってできるため、毛穴からうまく膿が排出されず、膿が溜まったニキビが破裂すると、皮脂腺が壊れてしまい、さらに周囲の皮膚組織をも破壊してしまいます。その結果ニキビ跡ができてしまうのです。ニキビに膿が溜まることによって外部からの手を加えずに自然に破裂してしまうことを自壊と呼ぶこともあります。

医療機関で膿を排出するという方法も

ニキビはニキビの中に溜まっている膿を排出してあげることで早期の回復が期待できます。そのため、医療機関で膿を排出するための治療を受けるという方法があります。この膿を排出する治療を面皰圧出といいます。面皰圧出とは、専用の医療器具を用いてニキビに穴をあけて膿を押し出すという治療法です。面皰圧出の有効性を示した臨床試験はありませんが、皮膚科学会でも効果を認めており、皮膚科ではすでに確立されている治療方法です。自分自身で膿を押し出そうとすると、ニキビを破裂させてしまってニキビ跡を形成する原因となってしまったり、ニキビの周囲の皮膚を傷つけたり、不衛生な指でニキビ周囲に触れることでさらにニキビを作りだす原因にもなりかねません。ですので、もしも膿を排出したいと考えたら医療機関で治療を受けて膿を排出してもらうことをおすすめします。

炎症が広がる前に皮膚科に相談

ニキビの治療は、早ければ早いほど短期間での治療効果が期待できます。また、早期の治療であれば、ニキビ跡を残さずに、快方へと向かいますが、炎症を起こしたり膿が分泌されたりと状態が悪くなればなるほど、ニキビ跡を形成する確率が非常に高くなります。ニキビ跡を作ってしまうと、治療に時間がかかるだけでなく、費用もかかってしまいます。また、ニキビの膿は炎症がさらに進んで悪化した状態ですので、ニキビの炎症が広がる前に適切な治療を受けることができれば、膿にならずに済むということなのです。
そのため、炎症が広がる前に、ニキビができたら早めに皮膚科に相談されることがおすすめです。

化膿したニキビの対処法

最後にニキビが化膿してしまった場合にはどのように対処をしていけばよいのか、その対処方法について解説していきます。

ニキビが化膿した場合は抗生剤を使うことも

ニキビが化膿してしまった場合には、抗生剤を使用することが必要となります。抗菌薬にはニキビに直接塗るタイプのものと、内服するタイプのものがありますが、化膿をしている場合にはこの両方を使用する場合がほとんどです。ですが、抗生剤は長期的に使用することで薬剤耐性といい、抗生剤が効かなくなってしまうことがあります。そのため、短期間抗生剤を服用して短期間で治すという方向性で治療が行われています。
化膿したニキビに対してはさまざまな種類の抗生剤が選択肢としてありますが、どの抗生剤を使用するのかは、医師の診察により、ニキビの程度や重症度で判断されます。もしも過去に抗生剤の副作用などで身体に異常が起こった経験があるという場合にはその旨をあらかじめ医師に伝えておくことをおすすめします。

膿が溜まった場合自分でニキビを潰さない

膿が溜まってくるとつい自分で潰したくなるかもしれません。ですが、先ほどもご紹介したように自分でニキビを潰して膿を排出しようとしてしまうと、破裂してニキビ跡を作ったり、不潔な手でニキビ周囲の皮膚を汚してしまうと、新しいニキビをさらに作ってしまう可能性があります。ニキビの膿を排出する治療として行われる面皰圧出は、皮膚科医が専用の機械を用いることでなせる治療であるといえます。素人が、指でニキビを潰して膿を出そうとした場合、仮にうまく潰せたとしても、膿を完全に排出することができず、少量でもニキビに膿を残してしまえば、ニキビは再発してしまいます。ニキビを完全に治さずに再発を繰り返すことでニキビ跡を形成する確率は上がっていきます。ですので、膿が溜まってしまった場合は自分でニキビを潰して膿を排出しようとせずに、皮膚科を受診し、医師から治療を受けることがおすすめです。

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監修医師

立花 義浩

資格
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
麻酔科標榜医
日本医師会産業医
日本体育協会スポーツドクター
経歴
北海道大学精神医学教室、北海道大学救急医学教室、東京慈恵医大救急医学教室にて修練を重ねた経験をもつ。また、銀座にて美容皮膚科医として、都内皮膚科クリニックにて、皮膚科医としての勤務経験をもつ。