粉瘤とは?
皮膚や皮脂などの老廃物が皮膚の内部で袋状の構造物を形成したもので、別名表皮嚢腫、アテローマとも呼ばれます。
本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)や皮膚の脂(皮脂)が、袋の中にたまってしまい、たまった角質や皮脂は袋の外には排出されないので、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。
身体のどこにでもできますが、特に顔、首、背中、耳のうしろなどにできやすい傾向があり、中央に黒点状の開口部があり、強く圧迫すると、そこから臭くてドロドロしたネリ状の物質が出てくることがあります。
粉瘤の原因
粉瘤の原因は明確になっていませんが、毛穴の詰まり、外傷、ウイルス感染などにより発生すると考えられています。
粉瘤は、有効な予防法はありません。
粉瘤の症状
最初は小さなしこりができます。
だんだん内容物がたまっていくことで大きくなり、数cm~10cmほどの大きさになることもあります。粉瘤を自己判断で圧迫したり、内容物を出そうとしたりすると、細菌感染を起こし症状が悪化することがあります。(粉瘤の炎症は感染ではなく、異物反応であるという説がありますが、いずれにしても最終的には感染を引き起こします)。
粉瘤の治療法
粉瘤は自然治癒することはないため手術が必要で、小さいうちの方がキズ痕も小さく済みます。
粉瘤の手術にはおもに「くりぬき法」と「切開法」の2つの方法があり、手術時間は5~15分程度です。
また粉瘤は、感染がない場合、感染がある場合で治療方針が異なってきます。
【くりぬき法】
皮膚の一部をくり抜き、内容物を除去した後に袋を取り除きます。
傷あとは小さくて済みますが、大きなものやいったん感染を起こしたものには適応とならないことがあります。
【切開法】
粉瘤の大きさに合わせて表皮を切開し、粉瘤の壁に沿って袋ごと取り除きます。
キズは術後半年~1年程度で目立たなくなります。大きな粉瘤や感染後の粉瘤はこの手術法となります。
※感染が見られた場合、局所麻酔後に切開します。
貯まっていた膿や内容物を取り除き、自宅で毎日洗浄を行います。
1週間程度で感染は落ち着くことが多いですが、袋は残っているため別日に来院し、手術を行います。感染してしまうとくりぬき法で摘出することが難しくなるため、切除法となります。
粉瘤とニキビの違い
「粉瘤かニキビかわからない」というご相談を多くいただきます。
ニキビ(尋常性ざ瘡)
毛穴に皮脂や角質が詰まって炎症を起こすもの
炎症が引くと自然に治癒することが多い
粉瘤(アテローマ)
垢や皮脂が袋状にたまる腫瘍
自然治癒はなく、放置すると徐々に大きくなる
粉瘤には中央に黒い点(開口部)が見られることがあり、強く押すと臭い内容物が出ることが特徴です。
ただし自己判断が難しいため、早めの受診をおすすめします。
粉瘤が感染したときの症状
粉瘤が感染すると以下のような症状が現れます。
- 赤く腫れる
- 押すと強い痛みがある
- 熱をもつ
- 膿や血が出る
受診の目安
✅ 痛みが強く日常生活に支障がある
✅ 急に大きくなってきた
✅ 発熱や倦怠感がある
このような場合は早めに皮膚科を受診してください。
粉瘤は再発する?
粉瘤は袋(嚢胞壁)ごと完全に取り除くことが重要であり、手術で取り残しがあると再発する可能性があります。
当院では再発予防のため、袋をしっかり取り除く手技を行っております。
ただし、感染している状態で膿を出す処置だけをした場合、袋は残るため再発します。後日改めて手術が必要です。
粉瘤手術の痛み・麻酔について
粉瘤摘出手術は局所麻酔で行います。
麻酔注射の際にチクッとした痛みはありますが、手術中は痛みを感じることはほとんどありません。
術後の痛み
麻酔が切れた後に軽い痛みや違和感がありますが、市販の痛み止めで対応できる程度の方がほとんどです。
粉瘤が悪性化することはある?
粉瘤は良性腫瘍ですが、ごく稀に粉瘤癌(表皮嚢腫癌)と呼ばれる悪性化が報告されています。
- 急速に大きくなる
- 表面がただれて潰瘍になる
- 出血しやすい
このような症状がある場合は、早めに受診して検査を受けましょう。
よくある質問Q&A
放置するとどうなりますか?
A. 粉瘤は徐々に大きくなり、感染を起こすリスクも高くなります。小さいうちに摘出することで傷も小さく済みます。
自分で潰しても大丈夫ですか?
A. 潰すと感染や炎症を起こし、かえって悪化することがあります。自己処置はせず、医療機関での治療を受けてください。
粉瘤は薬で治りますか?
A. 残念ながら、薬で治すことはできません。手術による摘出が必要です。
粉瘤は人にうつりますか?
A. 粉瘤は感染症ではなく、人にうつることはありませんのでご安心ください。
最後に
粉瘤は予防することがなく、粉瘤ができたとしても自分で潰して粉瘤が治癒することはないです。潰すことが原因で感染することもありますので、早めに医療機関で治療することをおすすめします。粉瘤はできたら治療するのが一般的です。
ごくまれに悪性化の報告もあり、急速に大きくなる、潰瘍を形成するなどの症状があるときは切除して検査を行ってください。