円形脱毛症と期間|MBC麻布十番(皮膚科)
円形脱毛症が起こる人の割合と回復までの期間
円形脱毛症はどのくらいの人に起こり、回復までどのくらいの期間を要するのでしょうか。
円形脱毛症は1000人に1人・2人がかかる病気
円形脱毛症を発症する割合は人口の1~2割程度とされており、この割合を数字で表すと1000人のうち1人~2人が発症する病気と考えられています。この割合は日本であっても米国であっても、社会情勢が変わっても変化がありません。また、男女差もほとんどなく、平均年齢は約33歳とされています。
大抵は単発型で一年以内に回復される方が多い
円形脱毛症の方の多くは単発型といい、円形の脱毛斑が1つみられるものです。単発型のみであれば症状が軽いことが多く、約80%の方が1年以内に完治しています。特に円形脱毛症特有の、丸い形で髪の毛が抜けており、1つあるいは数か所程度なら、数か月程度で治ると考えられているため、過度に怖がる必要はありません。さらに人によっては治療もせずに自然治癒をされています。円形脱毛症は単発型からスタートし、悪化すると後述する多発型などに移行していくことから単発型が割合として多いと考えられるのです。
まれに多発型・全頭型・汎発性の方も見受けられる
円形脱毛症は単発型が悪化すると多発型、全頭型、汎発型へと移行していきます。
多発型ですと、完治までに半年から2年程度の時間を要し、蛇行型となると複数年かかる傾向にあります。全頭型や汎発型の場合は治療がかなり長期になることがほとんどです。単発型は自然治癒をするため、自己判断で経過を見られるという方も多いのですが、場合によっては、多発型や全頭型に移行してしまい、なかなか治らないという例も少なくありません。そのため、経過を観察されるのも良いですが、一度皮膚科を受診して診察を受け、必要であれば単発型の段階から治療を受けられることをおすすめします。また、単発型の円形脱毛症で様子を見ているが1年経っても脱毛症が改善しないという方や徐々に脱毛の範囲や個数が増えてきているという方もなるべく早めに皮膚科を受診されるとよいでしょう。
円形脱毛症になる理由
なぜ円形脱毛症になってしまうのかその理由についても解説していきます。
明確な原因はわかっていない
実は円形脱毛症の明確な原因はわかっていません。今現在1番有力な説が自己免疫に関するものです。自分のリンパ球が成長期の毛包を攻撃して破壊してしまうので毛が成長できずに生えてこなくなってしまうのです。これは、毛包周囲のリンパ球の攻撃を薬で抑えることで、元通り発毛してくるということから、このメカニズムで脱毛が引き起こされていると考えられるようになりました。この自己免疫が毛包を攻撃してしまう理由についても現在完全に分かっていません。
遺伝も円形脱毛症の理由の1つ
自己免疫疾患のほかにも理由として考えられているのが遺伝です。円形脱毛症を発症した方の約2割が家族内発生、すなわち遺伝的に発症しています。
中国で行われた最新の大規模疫学調査によると、円形脱毛症患者さんの8.4%が家族内発症であり、親等が近くなり、円形脱毛症の患者さんとの関係性が近くなればなるほど発症率が高くなるという結果が出ています。また、欧米で行われた調査においても親等内での円形脱毛症の発症は一般の方に比べて10倍も高いと言われています。
ストレス以外にもウイルス感染などの要素がある
円形脱毛症=ストレスと結びつける方が多くいらっしゃいます。おそらく、メディアなどでもストレスを感じて10円ハゲができたなどとストレスと円形脱毛症を結びつけるような発言が聞かれる機会があったためそのように思われるのかもしれません。
たしかに、ストレスも円形脱毛症の直接的理由にまではならないものの、円形脱毛症と診断された方のうち、ある実験に協力された方の74%が強いストレスを経験しているというデータもあることから、因果関係は強いということが考えられています。
ストレス以外にも円形脱毛症を誘発する原因としてウイルス感染が挙げられます。円形脱毛症が自己免疫疾患であることから、インフルエンザなどウイルス感染によって免疫機能に変調をきたし、発症の誘因となることも考えられるのです。しかし、こちらも因果関係などについては不明です。ほかにも疲労が誘因となることがあるというようにも考えられています。
円形脱毛症で医療機関を受診する目安
円形脱毛症であったとしても経過観察していれば治癒する可能性もあるのでなかなか医療機関を受診するタイミングが分からず悩むという方もいらっしゃるかもしれません。円形脱毛症で医療機関を受診する目安について解説します。
異常な抜け毛を感じた時点で受診がおすすめ
円形脱毛症は、先ほどもご紹介したように単発型であれば自然に治る可能性がある一方で、多発型など症状が進行していけばいくほど治りにくくなります。そのため、抜け毛の量が多くなってきたと感じたら医療機関を受診しましょう。特に、全頭型は、数週~1、2か月のうちに本人も驚くほどかなりの量の毛が抜け落ちますので、1ヶ月の間に驚くほど髪の毛が抜けているという方は早めに医療機関を受診することがおすすめです。円形脱毛症の1/4は15歳以下の子どもが発症しており、さらに全頭型も子どもに多いタイプです。お子さんで抜け毛が増えていると感じた場合にも速やかに医療機関を受診してください。
脱毛範囲が全体25%未満を軽症と定義
円形脱毛症にも重症と軽症があります。軽症とは脱毛巣が頭部全体25%未満の場合を指します。円形脱毛症の治療ガイドラインではこの脱毛範囲25%をボーダーラインとしており、脱毛範囲が全体の25%未満であれば、効果が得られる治療も多く、治癒の可能性もあると考えています。
脱毛範囲が全体25%以上を重症と定義
一方で、脱毛範囲が全体の25%を超えると重症と定義されます。重症はさらに脱毛巣が 25~49%、脱毛巣が 50~74%、脱毛巣が 75~99%、100%(全頭)脱毛と細かく分かれ、それぞれS2、S3、S4、S5と分類されます。25%以上の重症となるとできる治療が少なくなり、治療効果も高いものは望めません。特にS5の全頭型においてはできる治療も少なく、確実な効果を得るためにはかなりの時間を要してしまいます。
重症化する前に早めの受診をおすすめします
ここまでご紹介してきたように円形脱毛症は重症化していけばいくほど治りにくい病気です。重症化するまでには年単位かかることもあれば数週間から数か月で重症化してしまうということもあります。自然治癒することもあるので医療機関を受診するタイミングを見誤ってしまうかもしれません。ですが、早期に治療を受けることで重症化せずに早期に治すことが可能です。じっくりと経過を見ず、検査や経過観察の指示をもらうためだけでも医療機関を受診する価値は十分にありますので、重症化する前に早めに医療機関で診察を受けるようにしましょう。
監修医師
立花 義浩
- 資格
- 精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
麻酔科標榜医
日本医師会産業医
日本体育協会スポーツドクター
- 経歴
- 北海道大学精神医学教室、北海道大学救急医学教室、東京慈恵医大救急医学教室にて修練を重ねた経験をもつ。また、銀座にて美容皮膚科医として、都内皮膚科クリニックにて、皮膚科医としての勤務経験をもつ。
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