子どもの円形脱毛症|MBC麻布十番(皮膚科)
円形脱毛症は大人だけの病気ではない
円形脱毛症=大人の病気と思われるかもしれませんが、子どもでも円形脱毛症にかかってしまうことが考えられています。
円形脱毛症の約1/4は子ども
円形脱毛症は人口の約1~2%の頻度で発生し、その約1/4の割合で15歳以下の子どもがかかっていると報告されています。大人と異なり重症化しやすいあるいは、円形脱毛症に気づいたときにすでに重症例である場合もあり、難治性の円形脱毛症も子どもに多いことが分かっています。
子どもの場合、自分で円形脱毛症に気づける子は少なく、大人や理美容師が髪を切るタイミングで気づくということが多いです。また、進行も早いため見つけたらすぐに治療を開始することが望ましいでしょう。
子どもの円形脱毛症の原因はさまざま
大人の場合、円形脱毛症の原因は自己免疫疾患であることが多いと言われています。この自己免疫疾患、すなわち免疫系の異常がおこる原因として、疲労や感染症など肉体的なストレスや精神的なストレスなどを契機として発症していることがわかっています。また、子どもの場合、さまざまな原因がからみあっているようです。子どもの円形脱毛症の場合も原因が自己免疫疾患やアトピー素因、遺伝性、ストレスなどがあることもあり、
ストレスの場合、ストレスとなっているものが明確であれば、治療を進めていくことができるのですが、子どもはストレスとなっている要因が明確に分からない場合も多いです。ですので、子ども自身だけでなくご両親が一緒にストレスの原因を模索していき、再発を防ぐためにもストレスとなっていることを考えて改善していくということも必要となるでしょう。
また、子どもの円形脱毛症の原因として大人よりも考えられるのがアトピー素因です。特に子どもの円形脱毛症のうち重症例の約34.6%にアトピー素因を合併していたとしており、特に重症例であればあるほどアトピー素因を合併していることがデータで分かっています。特に円形脱毛症の重症型である汎発型で50%、蛇行型で57%がアトピー素因を合併しており、重症例とアトピーの関連性があることが分かっているのです。
実際に大人の円形脱毛症と比較すると、子どもの方が円形脱毛症の原因としてアトピーが関連している割合が高いということが分かっています。
子どもがかかりやすい円形脱毛症の種類
子どもは円形脱毛症のどのタイプにかかりやすいのでしょうか。
単発型であれば、完治する割合も高い
円形脱毛症として最初に見られる型である単発型。もしも、円形脱毛症が単発型であれば、1年以内の治癒率は80%と考えられています。そのため、早期に円形脱毛症を見つけることができれば高い確率で改善していくことができるかもしれません。
重症型である多発型、蛇行型、全頭型や汎発型は子どもでも起こる可能性がある
円形脱毛症の中でも重症例となる多発型、蛇行型、全頭型や汎発型などは子どもでも起こる可能性が充分にあります。
これらのケースは、治療をしていても現状維持で症状がなかなか改善しなかったり、悪化したりといったケースが約6割を占めています。なかには治癒に10年以上かかってしまうケースもあり、難治な型となるのです。特に全頭型では、数週間から1カ月前後で急激に症状が進行してたくさんの髪の毛が抜けてしまうため、早い段階から治療を進めることが必要です。
子どもの円形脱毛症の治療と精神ケア
子どもが円形脱毛症であるという場合どのように治療をしていき、親としてはどのようなサポートをしていくことが必要となるのでしょうか。
早期発見早期治療が大切
先ほどまで何度かお話をしていますが、子どもの円形脱毛症は早期発見、早期治療をしていくことが望ましく、早期発見、早期治療をすることができれば、治癒する割合も高くなっていきます。子ども自身が円形脱毛症となっていることに気づくことが難しいため、大人が子どもの頭髪をチェックして気づいてあげることが必要となるといえます。
子どもの円形脱毛症の治療方法として用いられることが多いのが外用ステロイド療法です。外用ステロイド療法とはステロイド剤を頭皮に直接塗布して発毛を促していく治療方法なのですが、ステロイド剤によって頭皮に発赤などの副作用が生じる可能性があります。他にも広範囲の脱毛における治療であればSADBE、DPCPといった特殊なお薬を脱毛部分に塗布してかぶれを引き起こすことで発毛を促す局所免疫療法がおこなわれることがあります。その他の治療として液体窒素で脱毛部に冷たい刺激を与えることで、発毛を促進させる冷却療法もあります。
子どもの場合、治療そのものが身体に対して負担となってしまうという観点から、より身体に負担をかけてしまうと考えられるステロイド局所注射、ステロイド内服や点滴静注パルス療法などがガイドライン上推奨されていません。
そのため、できる治療が限られているといえます。また、アトピー素因が円形脱毛症の原因であると明確な場合はアトピーの治療を行うことで円形脱毛症が改善できることもあります。医師の判断の下、経過観察を行い、自然軽快を期待するということもあり得るため、治療については医師と十分に話し合われるとよいでしょう。
食事や睡眠といった生活環境も整える
食事や睡眠をゆったりととれるような環境を整え、お子さんが心のゆとりを取り戻せるように環境を設定していきましょう。円形脱毛症についてはゆっくりと治療をしていくものです。また、これを食べたから、こんな生活をしたから円形脱毛症が急速に改善されるというものではありません。子どもが円形脱毛症となると両親も子どもに対して神経をとがらせストレスとなることがあります。子どもだけでなく家族みんなが食事や睡眠をゆったりととれるように生活の環境を変えてみましょう。
抜け毛のショックを緩和する精神的ケアも行う
円形脱毛症となることで精神衛生的にも社会的にも問題を抱える子供が数多くいるということは事実です。毛が抜けていくことでボディイメージが変わっていきますし、思春期頃になるといじめの原因となってしまうこともあります。それがさらにその子のストレスとなってしまいます。抜け毛については、ウイッグを活用したり、脱毛部をピンで隠したりとさまざまな方法を取ることが可能です。しかし、無理強いはせずに、その子にとってベストな方法を一緒に考えていきましょう。また、子どもに対して特別扱いをせずに、今まで通り普通に扱うことが子どもの精神安定へとつながると考えられています。子どもの精神状態が安定し、抜け毛のショックへと立ち向かっていけるような精神的ケアを行っていくようにしましょう。
大切なお子さんの抜け毛に気づいたら皮膚科へ
もしもわが子に脱毛している部分があったという場合や、抜け毛が増えてきているということに気づいたならばまずは皮膚科へ相談しましょう。自己判断で経過観察をしてしまうと悪化を招き、治癒に時間がかかってしまうこともあります。早期発見、早期治療をすることができれば早期の回復も望めますので、なるべく早いタイミングで皮膚科を受診してください。
また、抜け毛が増えて来ているという場合、それが円形脱毛症ではなく抜毛症であるという可能性もあります。円形脱毛症と抜毛症は全く別の病気です。
他にも子どもには頭部白癬、先天性皮膚欠損症など円形脱毛症と類似した病気が多くあります。これらであった場合には、円形脱毛症と治療なども異なりますので、これらの病気との区別も兼ねて皮膚科を受診されることをおすすめします。
監修医師
立花 義浩
- 資格
- 精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
麻酔科標榜医
日本医師会産業医
日本体育協会スポーツドクター
- 経歴
- 北海道大学精神医学教室、北海道大学救急医学教室、東京慈恵医大救急医学教室にて修練を重ねた経験をもつ。また、銀座にて美容皮膚科医として、都内皮膚科クリニックにて、皮膚科医としての勤務経験をもつ。
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