尋常性乾癬(かんせん)

乾癬とは?

乾癬とは、皮膚が赤くなり、盛り上がったところにフケのようなカサカサした白いかさぶたができることをいいます白いかさぶたは古い皮膚の細胞が角化してもりあがっている垢で鱗屑(りんせつ)と言います。鱗屑を無理にはがすと点状の出血がみられる通常、皮膚が生まれ変わるまでの時間(ターンオーバー)は45日ほどですが、乾癬では4~7日間と新陳代謝の速度が約10倍となり表皮が異常に増殖します。
皮膚のどこでもおきる可能性がありますが、髪の生え際や頭皮、膝や肘など外からの刺激が多い場所に多いといわれます。かゆみで悩むひとも多く、掻いてしまうと乾癬が悪化してしまいます。日本人の300人に1人程度、中年の男性に多いのも特徴で、乾癬の患者さんの約65%が男性です。

乾癬にはいくつかタイプがありますが尋常性乾癬が大半を占め、皮膚の赤い部分に白く角化した垢がもりあがる状態になります。
乾癬がある方のうち2割で爪にはがれる、変形などの異常や関節炎を併発するといわれています。

乾癬かもとご心配の方へ

体にはっきりとした赤い斑点が出ている場合は乾癬の可能性が考えられます。乾癬の症状がよくみられる部位は頭皮、ひじの外側、ひざ小僧(ひざがしら)、おしりなどです。
症状が似ているものとして「かぶれ」や体に水虫の菌(白癬菌)が感染して引き起こされる「体部白癬」などがあります。これらの疾患と乾癬との鑑別は難しいですが、皮膚科医であれば見分けがつくことがほとんどです。

乾癬の原因

乾癬の原因はわかっていませんが、さまざまな要因が関わっていると考えられています。家系に乾癬がいる人が多いとなりやすいなどの体質、ケガなど物理的な刺激や感染、薬、ストレスも関係しているといわれているのです。もうひとつが免疫の異常で、体を守ってくれるはずの免疫のシステムが暴走することで皮膚の異常を引き起こすといわれています。

乾癬の症状はよくなったり悪くなったりを繰り返しながらも症状はつづきます。ひっかいたりこすったりしたりすることが悪くなるきっかけになりますし、乾燥も大敵です。暴飲暴食や睡眠不足などの生活習慣やストレスで乾癬が悪くなることもあります。

乾癬の初期症状

乾癬の初期症状としては、赤みとかゆみがほとんどの患者さんに見られます。これらの初期症状は湿疹とよく似ているため、普通の人が見たり触ったりするだけでは乾癬だとは分からないでしょう。また、医師の診断の場合も、問診や視診に加えて皮膚生検を行うことで判別しやすくなります。
乾癬の場合は症状が進行すると、境界がはっきりして盛り上がりかさかさしてきます。湿疹の場合は皮膚炎やかぶれが生じたり、水ぶくれやただれ、さらに患部が化膿してじゅくじゅくすることがあります。

陰部の乾癬について

乾癬は外からの刺激によって皮膚症状が出るため陰部にあらわれることもあります。ただし発生頻度はそれほど多くありません。
陰部は湿気が多い部位なのでかぶれや白癬菌の感染を起こすことがあります。陰部だけに症状がある場合は乾癬よりもこれらの疾患が疑われますのでご相談ください。

乾癬の診断

乾癬ではアウスピッツ現象が特徴的で分厚くなった垢を無理にはがすと点状に出血します。また、乾癬では病変がでていない皮膚をこする、ケガをするなどすると新しく病変がでるケブネル現象があり、悪化させる要因になります。特徴的な皮膚の病変やアウスピッツ現象やケブネル現象など症状の経過で診断することができるのです。

乾癬の治療

乾癬の治療は大きく4つ(塗り薬、飲み薬、注射、光線療法)です。基本となる治療としては活性型ビタミンD3製剤やステロイドの外用があります。
ステロイドは炎症を抑える作用、ビタミンD3は皮膚の新陳代謝をととのえて正常な皮膚にしていく働きがあります。
なお最近はビタミンD3製剤とステロイドの合剤(マーデュオックス、ドボベット)が多く使われています。重ね塗りする手間もなく、一日一度でいいので使いやすい薬です。

【保険による診療】

外用療法:ビタミンD3軟膏単独
ステロイドとビタミンD3の混合軟膏
内服 :かゆみがある場合は抗ヒスタミン薬内服を併用
レチノイド(ビタミンA誘導体)
シクロスポリン(免疫抑制剤)
アプレミラスト(商品名:オテズラ)
注射:生物学的製剤
紫外線療法:エキシマライト 尋常性乾癬に対しての切り札的な治療

乾癬は治る?経過と完治について

乾癬は慢性的に経過する皮膚疾患で、現時点では根治させる治療法はありませんが、適切な治療で症状を抑え、ほとんど目立たない状態(寛解)を維持することができます。

近年では外用薬、内服薬、注射薬(生物学的製剤)など治療選択肢が増え、日常生活に支障なく過ごせる患者さんが多くなっています。

乾癬と生活習慣・食事との関係

乾癬は生活習慣が症状に影響するといわれています。

食事

肥満は乾癬の悪化要因となるため、バランスのよい食事と適正体重の維持が大切です。
動物性脂肪の摂取過多は乾癬悪化の可能性があるため、魚や野菜中心の和食がおすすめです。

喫煙・飲酒

喫煙は乾癬を悪化させることが知られています。禁煙をおすすめします。
飲酒も症状を悪化させる場合があるため、飲む量を控えめにすることが望ましいです。

ストレス管理

ストレスは乾癬の悪化因子となるため、十分な休息、趣味や運動で気分転換をするなど、ストレスをため込まない生活を心がけましょう。

関節症性乾癬について

乾癬患者さんのうち約10%に関節炎を伴う関節症性乾癬がみられます。
指の関節や足の指、膝、腰などに痛みや腫れが出るのが特徴です。
皮膚症状より先に関節症状が出る場合もあるため、

  • 関節の腫れや痛みを感じたら早めに医師へ相談してください。
  • 関節症性乾癬では、皮膚科とリウマチ科が連携して治療を行います。

乾癬と日常生活

入浴

乾癬があっても入浴は問題ありません。ぬるめのお湯で、ナイロンタオルなどで強くこすらないようにしましょう。

運動

軽い運動はストレス解消にもなり、健康維持に役立ちます。ただし、汗をかいた後はシャワーで汗を流し、保湿してください。

日光浴

適度な紫外線は症状を改善することがありますが、日焼けしすぎると逆効果になるため、医師の指示に従いましょう。

感染性

乾癬は感染症ではないため人にうつることはありません。周囲の人に誤解されることがありますが、安心してください。

妊娠・授乳と乾癬治療

妊娠中・授乳中は使用できない薬剤があります。

  • 外用薬(ステロイド、ビタミンD3製剤)は医師の指示のもとであれば使用可能なことが多いです。
  • 内服薬や一部の注射薬は使用できないため、妊娠希望がある場合は必ず事前に医師へ伝えてください。

生物学的製剤治療の詳細

治療内容

生物学的製剤は、乾癬の炎症に関わる物質をピンポイントで抑える薬剤です。

  • 投与方法:2~12週間ごとの皮下注射または点滴
  • 自己注射:薬剤によっては自宅で自己注射が可能です

副作用

感染症にかかりやすくなることがあります。発熱や倦怠感がある場合はすぐに受診してください。

費用

生物学的製剤は高額ですが、高額療養費制度が適用されるため自己負担は軽減されます。詳細は医師・受付でご相談ください。

よくある質問Q&A

乾癬は人にうつりますか?

A. 乾癬は感染症ではないため、人にうつることはありません。

食事制限は必要ですか?

A. 特定の食品を制限する必要はありませんが、バランスの良い食事と適正体重の維持が大切です。

市販薬で治りますか?

A. 市販薬では乾癬を治すことは難しく、症状を抑えるには皮膚科での診断と治療が必要です。

ステロイド外用薬は長く使って大丈夫?

A. 医師の指示通りに使用すれば安全です。自己判断で中止すると症状が悪化することがあります。