酒さ

酒さとは?

酒さとは、顔などに赤み・火照りが長時間かつ繰り返し出現する慢性炎症性疾患のことです。とくにほほや額、鼻の周りやあご、首を中心に出現し、しばしばかゆみを伴うことがあるほか、悪化したまま放置していると、鼻周辺が腫れあがって鼻瘤(団子鼻)を形成することがあります。
30代以降の人が発症しやすい傾向にあります。

酒さは4つの期間によって臨床像が区別されています。
酒さ前駆期
血管期
炎症期
進行期

酒さ前駆期

ほほと鼻の皮膚が紅潮します。紫外線や寒暖差、飲酒などの外的刺激や精神的ストレスなどを受けて赤みは数時間~数日間持続して見られます。

血管期

皮膚が赤く腫れあがったようになり、毛細血管拡張により皮膚の下の細い血管がよく見えます。

炎症期

ニキビのような小さなポツポツができ、膿疱を形成することが数週間ほど続きます。

進行期

鼻が赤く腫れ、周辺の皮膚が分厚くなります。症状が長引いているのをそのまま放置していると鼻瘤(団子鼻)を形成することがあります。

このほか、目の周りが腫れたり結膜炎、角膜炎を生じる眼型の酒さもあります。
酒さは、「ただの顔の赤み」と考えられやすいですが、他の症状と合併していたり、複合的な要因によって発症していたりすることがほとんどなので、全身性疾患としての背景を見据えたうえ診断・治療を考えることが大切です。

酒さの原因

酒さの原因は明確には特定されていません。慢性的な化粧品や金属アレルギーでのかぶれが原因になる、寒暖差などの刺激をうけて末梢血管が拡張しやすくなっている、皮膚表面の毛包虫感染やピロリ菌感染が要因となる、といったさまざまなタイプの原因説があります。
また、悪化の原因としては紫外線、温度差、香辛料や熱い刺激物の摂取、飲酒、化粧品、過剰な皮脂、緊張や不安などの精神的ストレス、ニキビダニなどが挙げられています。
海外の調査では、酒さの患者には、炎症性腸疾患、循環器系疾患、高脂血症、パーキンソン病、腫瘍やリウマチといった自己免疫疾患を持っていることが多いという報告もあります。
酒さに伴う全身性疾患などを確認することが推奨されています。

酒さの診断

酒さは医師による視診と問診で診断がつくことが大半です。
よくある疾患として、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、花粉症皮膚炎、膠原病などとの鑑別が必要になります。
なお、こうした疾患は酒さと合併して発症していることが珍しくありません。重要なのは、酒さと合併している疾患の治療を同時並行的に行うことです。

酒さの治療

酒さの治療は、治癒というよりも寛解や緩和を目指す、症状のコントロールを目的としています。自宅でスキンケアなどをするだけでは改善がむずかしく、医療機関での適切な治療(外用薬、内服薬、レーザー治療など)が必要となります。

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酒さの予防・日常生活での注意点

紫外線対策

紫外線は酒さを悪化させる原因のひとつです。外出時は必ずSPF30程度でノンケミカル(紫外線散乱剤)の日焼け止めを使用し、帽子や日傘も活用してください。

洗顔方法

洗顔時は熱いお湯ではなく、30~35℃程度のぬるま湯を使い、泡立てた洗顔料を手で優しく広げ、こすらず洗い流しましょう。

スキンケア用品の選び方

酒さの方は肌が敏感になっているため、アルコールフリー・無香料・無着色・低刺激性の保湿剤や化粧水を選びましょう。
使用前に二の腕などでパッチテストするのも安心です。

温度差の回避

寒暖差は血管の拡張収縮を促し症状を悪化させます。冬場はマスクやスカーフで保温し、急激な温度変化を避けるようにしましょう。

飲酒や香辛料の制限

飲酒や香辛料、熱い飲み物は血管拡張作用があり、症状悪化の原因となるため控えることをおすすめします。

酒さとスキンケア化粧品の選び方

保湿剤

セラミドやヒアルロン酸配合の保湿剤は肌バリア機能を補うため効果的です。
ワセリンは刺激は少ないですがベタつきやすいため、使用感を考慮し選択してください。

ファンデーション選び

ミネラルパウダーファンデーションやノンコメドジェニック処方の製品がおすすめです。
クレンジングはオイルではなくミルクタイプやジェルタイプを使い、洗浄後は保湿を忘れずに行いましょう。

酒さの治療期間・通院頻度

酒さの治療は寛解を目指すため長期になることが多いです。

治療効果を実感するまで

外用薬では2~4週間程度で赤みや膿疱の改善が見られることが多いですが、個人差があります。

通院頻度

初期は月1~2回、症状が安定すれば数ヶ月に1回の経過観察となる場合が一般的です。

酒さの完治可能性と予後

酒さは完治する病気ではなく、症状をコントロールし寛解状態を維持することが治療目標です。
しかし、適切な治療と生活習慣の改善で症状が出ない状態を維持できるケースも多く、諦めず医師と相談しながら治療を続けましょう。

酒さとニキビの違い

見た目が似ているため間違われやすいですが、

  • 酒さ:顔全体が赤く、毛細血管拡張や膿疱がみられる
  • ニキビ:皮脂分泌過多による面皰や炎症が中心

と異なります。治療法も異なるため、自己判断せず皮膚科を受診してください。

酒さとメンタルヘルス

酒さの赤みや膿疱は外見への影響が大きく、人によっては外出や人前での緊張から精神的負担が増すことがあります。
ストレス自体も悪化要因になるため、必要であれば心療内科やカウンセリングの受診も検討しましょう。

よくある質問Q&A

酒さは感染しますか?

A. 酒さは感染症ではないため、人にうつることはありません。

市販薬で治せますか?

A. 市販薬のみでの改善は難しく、皮膚科で適切な治療を受けることが重要です。

食事制限は必要ですか?

A. 食品そのものが直接の原因ではありませんが、香辛料やアルコール、熱い飲食物は血管拡張を促し悪化する場合があります。