脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎とは?

脂漏性皮膚炎は、白色~薄い黄色味をおびたフケや鱗状の乾いたフケの固まりができる皮膚疾患で、頭皮や髪の生え際、顔(眉毛・眉間、小鼻、耳の後ろ・内側)、わきの下、胸や背中、股間、膝の裏といった、皮脂の分泌が盛んな部位(脂漏部位)でよく見られます。脂っぽい細かい皮膚がポロポロとむけ落ちて粉ふきいも状態になったり、患部が赤くなったりするケースもあります。

赤みや痛かゆがない、またはあったとしても軽くてフケだけが目立つような場合は、フケ症と診断されることが多いです。
こうした軽度の症状だと治療を受けずに放置する人がいますが、ひどくなるとフケが固まってかさぶたのようになることがあります。
さらに、徐々に重症化したり他の部位でも発症したりと、慢性的に進行することが多く、あとで乾癬に発展または乾癬を合併したりすることもあります。
多量のフケガ出たりかゆみが強くなっている場合は、脂漏性皮膚炎と診断されることが一般的です。ほかの皮膚炎と異なる大きな特徴は、カビ(真菌)が原因になっている点です。

脂漏性皮膚炎には「乳児型」と「成人型」があり、人生の中で発症する時期によって大別されています。乳児脂漏性皮膚炎は乳児の2~5%ほどに見られる一般的な疾患で、生後2~3週目から発症します(半年から10カ月ほどで自然に治ります)。
成人型脂漏性皮膚炎は思春期以降の成人に多く見られ、改善したり悪化したりを繰り返すことがよくあります。真菌が原因なので自然治癒はほとんどありません。
特に男性に多く認められる疾患ですが、これは皮脂の分泌を過剰に働かせるのがアンドロゲンという男性ホルモンが影響しているからだと考えられています。
脂漏性皮膚炎から脱毛も起こることがあります。疾患の詳しい原因については次章で説明します。

脂漏性皮膚炎の原因

脂漏性皮膚炎の原因は、実はまだ完全には明らかになっておらず、多因子疾患と考えられています。
遺伝的要因、気温や湿度などの環境的要因のほか、心身のストレスも原因のひとつになる可能性があります。

ただ、近年の研究では、Malassezia属真菌(マラセチア)というカビ(真菌)の一種が増殖することによる影響が特に大きいとされています。
マラセチアは皮膚の常在菌で、多くの人の皮膚に存在しています。しかし、皮脂量が多くなるとそれをエサにしてマラセチアが増殖しやすくなり、結果として脂漏性皮膚炎を引き起こすことがあります。また、マラセチアが皮脂に含まれるトリグリセドという成分を遊離脂肪酸へと分解することでも、皮膚に刺激が与えられ、皮膚炎を起こす原因の一つになるといわれています。
皮脂分泌量が過剰に増えるのは、ビタミンB2、B6などの栄養不足による代謝異常、ストレスや寝不足、ホルモンの乱れ、清潔が保たれていないこと、などがよく原因として挙げられます。

脂漏性皮膚炎の診断

脂漏性皮膚炎を確定する診断は難しく、ほかの皮膚炎ではないことを調べながらの診断になることが多いです。
問診では、患部になっている部位をすべてみせるようにしてください。また、かゆみや痛み、発熱があるかを口頭で伝えてください。
脂漏性皮膚炎ではない皮膚炎の可能性が生じ、早めの治療が必要になることがあります。このほか、アレルギーを持っているか、現在使用中の薬はあるかなども確認します。
尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、カンジダ症、白癬、皮膚筋炎などと区別が難しいためご相談ください。

脂漏性皮膚炎の治療

脂漏性皮膚炎の治療では、マラセチアの繁殖を抑えるための抗真菌外用薬(ニゾラールなど)を1日2回ほど塗ることが中心となります。
また、炎症が強い場合は抗炎症作用のあるステロイド外用薬を使うこともあります。ステロイド製剤に対して抵抗感がある人は医師に伝えてみましょう。ただし、外用薬のステロイドであれば、全身におよぶような副作用はほぼありません。

【保険による診療】

外用ステロイド剤
外用抗真菌剤
かゆみが強い場合 抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤
ビタミンの欠乏が影響している場合 ビタミンB1,B6製剤