円形脱毛症とストレスの関連性 |MBC麻布十番(皮膚科)

円形脱毛症とストレスの関係

円形脱毛症はストレスと関係していることが考えられていますが、どのような関係があるのでしょうか。

毛包に対する自己免疫反応で毛が抜ける可能性が高まる

円形脱毛症の詳しい原因は現在も不明とされているものの、最も考えられているのは自己免疫反応です。自己免疫反応とは、自分の免疫細胞が自分の身体の細胞を敵だと認識して、攻撃をしてしまうことをいいます。自分のリンパ球が自分の毛包を攻撃してしまうのか、その理由は完全には分かっていません。ですが、リンパ球の攻撃を抑えることで、髪の毛が元通り生えてくることから、この可能性が高いと考えられているのです。
実際に、過剰な酸化ストレスは、炎症の増強やアポトーシス誘導による組織障害、トレランスの破綻による自己免疫応答の惹起などによって、自己免疫の病態形成に深く関与しているという研究報告もされており、ストレスは自己免疫反応に関係しているということが考えられています。

強い精神的なストレスにより免疫反応が変調する

PTSD、急性ストレス反応、適応障害、他のストレス反応などのストレス関連障害と診断された方に対して行われた実験によると、強い精神的なストレスは自己免疫疾患を発症するリスクを高めており、免疫反応を変調させているということが分かっています。
特に、若い方で顕著であるという結果も出ており、若い方で強い精神的なストレスを受けると、免疫反応を変調させ、自己免疫疾患に罹患するリスクが高まり、円形脱毛症を発症するリスクも高まることが考えられます。

精神的ストレスは直接的原因ではないが関係性は高い

とはいえ、精神的なストレスが直接円形脱毛症の原因となっているということは考えにくいものです。強いストレスや長引くストレスによって交感神経が異常をきたし、血管を収縮させたり、頭部への血流が悪くなったりすることで、毛根が栄養不足となり、脱毛が起こると考えられてもいますが、脱毛に至るまでの栄養不足になるというのも詳しいことはわかっていません。
ですが、ここまでご紹介したようにストレスは、円形脱毛症の原因を誘発する可能性があるということも分かっており、さらに円形脱毛症と診断された方のうち、実験に協力された方の74%が強いストレスを経験しているというデータもあります。直接的原因ではないものの決して軽視できないものでもあるのです。

ストレスによる円形脱毛症の経過と治療

ストレスによって起こった円形脱毛症の経過と治療について解説していきます。

1年ほどで自然治癒する場合もある

円形脱毛症は必ずしも治療が必要という病気ではなく、自然治癒する可能性もあります。特に、脱毛斑の少ない場合は、ほとんどが自然に治り、治療も不要と考えられています。
症状が最も軽いタイプの単発型であれば約80%の人が1年以内に治癒しているとのデータもあります。ですが、なかにはそのまま多発型など重症のタイプに移行してしまって治療が長引くこともあります。ですので、自己判断で自然治癒を待つのではなく、医療機関で医師の診察を受け、医師から経過観察において自然治癒の見込みがあるかどうかをチェックしてもらうとよいでしょう。

症状に応じて、ステロイドの使用も

円形脱毛症の症状の治療では、ステロイド薬を使用していくことが多いです。特に円形脱毛症で行われるのはステロイド外用療法です。ステロイド外用剤を直接患部に塗布していきます。その治療をしていても、あまり効果を感じられない時に、ステロイドを頭皮に直接注射をしていきます。この治療は適応される方が限られるため必ず医師に相談し、医師の指示に従いましょう。
他にも、ステロイド内服療法などで免疫反応を抑えて治療をするという方法がありますが、治療の適応となる方が限られています。早めに医療機関に相談されることをおすすめしております。

円形脱毛症を悪化させないためにストレスをより溜めこまない

円形脱毛症の直接的な原因としては考えにくいものの、誘因となる可能性があるため、ストレスはため込まないように心がけていきましょう。

治療中は、発毛が見られるまで時間がかかる

治療を始められた方はいつ髪の毛が生えてくるのかと気になってしまい、それがストレスとなる方もいらっしゃるかもしれません。
円形脱毛症の治療は初めてすぐに効果が見られるというわけではなく、ある程度時間がかかります。どのくらい時間がかかるかは脱毛の程度や治療内容によって個人差があるものの、最短でも数か月単位の時間が必要となることもあります。ですので、上手に自分のストレスと向き合い、上手くストレスを発散させていきながら、信頼できる医師と一緒になって治療を継続していくこと大切なのかもしれません。

髪の毛が生えてくるまでのストレスを解決していこう

脱毛を経験した方は髪の毛が生えてくるまで誰かに指摘されないか、外に出るのが恥ずかしいなど様々なストレスを抱えてしまいます。特に、お仕事をされている方や学校に行っている方など集団の中に身を置かなければならない環境の方は、他人の目が気になり、それがストレスとなってしまうこともあります。
そのため、髪の毛が生えてくるまではウイッグ(かつら)を活用してみてはいかがでしょうか。日本皮膚科学会でも、円形脱毛症の方が治療過程でウイッグを使用することは治療にも社会生活にも前向きになれ、QOL(生活の質)が向上するということから使用を推奨しています。また、ウイッグを使うことで頭皮に影響が出て脱毛が進行するのではと考える方もいらっしゃるかもしれません。ですが、ウイッグの使用は治療に影響を及ぼさないことが分かっていますので、円形脱毛症によって人間関係のストレスを抱えている方あるいは、ストレスとなるのではと悩まれている方は、ウイッグをぜひ活用してみてください。
近年ウイッグは種類も豊富であり、大人用や子供用などさまざまなタイプがあります。脱毛の方のための専門のウイッグを作成している会社もあるのでぜひ活用してみてください。

ゆっくりとあせらず治療に向き合うことが大切

円形脱毛症は先ほどもご紹介したように治癒までに長い時間を要する病気です。そのため、ゆっくりと焦らずに治療に向き合っていくことが大切です。重症化すればするほど治療は長期化しますし、一度治ったとしても再発する可能性もあります。そうすると治療の意欲が低下するという方ももちろんいらっしゃいます。円形脱毛症の治療で大切なのは自分の生活の質であるQOLの維持です。円形脱毛症と付き合いながら自分の生活の質が維持できるように、環境を整え、ゆっくりと治療に向き合っていきましょう。また、治療で即効性が得られないからといって、民間療法などを試してみるということもおすすめできません。円形脱毛症は原因が完全に分かっていないということもありまだまだ不明な点も多くある病気です。医療的な根拠が不十分な療法には手を出さず、根気よく病気と付き合っていきましょう。

抜け毛が増えたと感じたら、セルフケアの前に一度皮膚科へ相談

最近抜け毛が増えてきたと感じた時に、シャンプーを見直したり育毛剤を購入したりと何かしらの対策を取る方もいらっしゃるかもしれません。ですが、その抜け毛が円形脱毛症によるものであった場合、これらのセルフケアでは抜け毛を止めることはできないのです。
抜け毛が増えてきた、円形脱毛症を他の方から指摘されたという場合にはなるべく早く皮膚科へ相談されることをおすすめします。

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監修医師

立花 義浩

資格
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
麻酔科標榜医
日本医師会産業医
日本体育協会スポーツドクター
経歴
北海道大学精神医学教室、北海道大学救急医学教室、東京慈恵医大救急医学教室にて修練を重ねた経験をもつ。また、銀座にて美容皮膚科医として、都内皮膚科クリニックにて、皮膚科医としての勤務経験をもつ。