脂漏性皮膚炎と顔|MBC麻布十番(皮膚科)

脂漏性皮膚炎が顔にできるのはなぜ?

脂漏性皮膚炎は特に顔にできることが多い皮膚炎です。なぜ、顔にできやすいのでしょうか。

脂漏性皮膚炎は脂腺の多い箇所にできるから

脂漏性皮膚炎は皮脂を好むマラセチア菌という菌が皮脂を餌に増殖していきます。さらに、このマラセチア菌は、リパーゼという遊離脂肪酸を生じさせて皮脂を分解するのですが、このリパーゼが炎症反応を引き起こすことによって脂漏性皮膚炎が発症すると考えられています。人の身体の中で皮脂腺が最も多いのは頭皮でその次が顔となります。ですので、脂漏性皮膚炎は顔にできやすいのです。

顔では特に鼻の周りにできやすい

先ほど、皮脂腺が多い部分は顔であるとご紹介しましたが顔の中でもさらに皮脂腺が多い部分があります。顔の中で最も皮脂腺が多く、皮脂の分泌量が多いのは額や鼻などのいわゆる「Tゾーン」と呼ばれるところです。鼻の中でも鼻の周りは皮脂分泌量が多く、溝になっていて皮脂もたまりやすいということもあり、鼻の周りに多くできると考えられているのです。

眉毛部、眉間、耳介、耳後部にもできる場合も

顔の中では他にも眉毛部、眉間、耳介、耳後部にできることもあります。黄色から赤みがかった鱗屑といって皮膚がかさかさとしたうろこ状になり、そこが隆起しているものが、眉毛部、眉間、耳介、耳後部に出てきた場合には脂漏性皮膚炎の可能性があります。

脂漏性皮膚炎のタイプと原因

脂漏性皮膚炎には2つのタイプがあり、タイプによって原因が異なります。脂漏性皮膚炎のタイプとその原因について詳しく解説します。

成人型

成人型とは思春期に発症して、大人になっても長期間続くタイプの脂漏性皮膚炎のことをいい、男女比は2:1と男性にやや多いことが特徴です。成人型は眉毛内部、鼻や口のまわり、耳の後ろなどに発疹が出現することが多く、特にフケの量が多くなります。
成人型の脂漏性皮膚炎は慢性化してしまい、再発を繰り返し治りにくいタイプです。特に頭皮に脂漏性皮膚炎ができてしまうと薄毛や脱毛へとつながることがあったり、顔にできるとニキビの原因になったりと、他の疾患を誘発してしまう可能性もあります。
成人型の脂漏性皮膚炎の原因は先ほどもご紹介したマラセチア菌という皮膚の常在細菌によるものと、皮脂の分泌量が過剰となるものが考えられていますが、確固たる原因については不明とされています。

乳児型

乳児型とは生後2~3週間頃から出現し、4~8か月後までに自然に消失していくタイプの皮膚炎のことを言います。こちらも成人型同様に男女比2:1と男性に多い傾向にあり、赤ちゃんの3人に1人に起こると考えられていることが特徴です。髪の生え際から頭部に、黄色いかさぶた状の発疹が出現します。乳児型の脂漏性皮膚炎の原因は、お腹の中で育つ際に母体から受けてきた女性ホルモンの影響で乳児の皮膚が脂成分の分泌が多くなっていることが原因です。脂成分が厚くなり、かさぶたのようになって付着するとその刺激によって炎症が起こり、赤くなる等の症状が見られるようになります。

脂漏性皮膚炎の治療

乳児型の脂漏性皮膚炎は自然に改善していくことができますのでここでは、成人型の脂漏性皮膚炎の治療方法についてお伝えします。

ステロイド

脂漏性皮膚炎の治療は基本的にステロイドの外用剤を使用します。ステロイド剤はその強さが5段階に分かれているのですが、まず、医師が脂漏性皮膚炎の状態をきちんと観察し、症状に合わせて強さを選択していきます。ですが、ステロイド剤には副作用があるため、特に強いものを長く使い続けるということはできません。そのため、症状が軽快してきたタイミングで、ステロイド剤の使用を終了することもあります。とある研究の報告によると、ステロイド外用剤の場合、炎症をしっかりと抑えてくれる一方で1ヶ月以内の再発率が高いことが特徴です。そのため、症状が経過してステロイド剤の使用を終了したとしても、また、再発してステロイド剤を使用するというのを繰り返さなければならない場合もあります。

抗真菌剤

抗真菌剤とは、真菌を退治するためのお薬で、ここでは脂漏性皮膚炎の原因となるマラセチア菌を退治するために使用します。抗真菌薬の外用剤はマラセチア菌が陽性であれば約80%の方に有効で、1ヶ月以内の再発率が低いということも特徴です。さらに長期的に使用が可能という特徴もあり、ステロイド剤の使用を終了した後でも引き続き使用されるお薬となります。特に海外においては脂漏性皮膚炎のファースト治療として抗真菌剤を含んだ外用薬が用いられているほど、脂漏性皮膚炎の治療にはなくてはならないお薬となるのです。

抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤

抗アレルギー剤と抗ヒスタミン剤は、脂漏性皮膚炎によってかゆみが強いという場合に用いられるお薬です。ステロイドや抗真菌剤には鱗屑や赤みといった症状を改善したり、マラセチア菌を減らしたりといった効果は期待でき、また、ステロイド外用で炎症を抑えていくことにより、かゆみがだんだんと改善されていくのですが、それでも強い痒みによって日常生活に支障をきたしているという場合には、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤が処方されることもあります。

ビタミンB剤とビタミンH剤

ビタミンBとビタミンHには、脂漏性皮膚炎による赤みを改善する効果が期待されているため、脂漏性皮膚炎の症状で赤みが気になるという方には、ビタミンBとビタミンHを補給できるお薬を処方しています。また、ビタミンBについては、脂質の代謝を促すため、食事から過剰に摂取してしまった脂質を効率よく代謝し、脂漏性皮膚炎の悪化を予防してくれるのです。もちろん、食事からこれらの成分を摂取しても良いのですが、忙しい方など食生活が不規則になりがちな方などは、お薬の力を借りて効率よく成分を取り入れていけるとよいでしょう。

湿疹が続くようであれば皮膚科に相談

脂漏性皮膚炎は慢性化することが特徴です。そのため、湿疹が長期間続いているという場合には治療をしなければ自然な軽快は望めません。
湿疹が続いて辛いという方はまずは皮膚科に相談していただき適切な治療を受けることをおすすめします。
脂漏性皮膚炎は類似疾患も多く、脂漏性皮膚炎だと思ってセルフケアをしていたが実は脂漏性皮膚炎ではなかったという例も少なくありません。そのため、脂漏性皮膚炎だろうと自己判断せずに、皮膚の専門医である皮膚科の医師に脂漏性皮膚炎であるかどうかを診断してもらうためにも皮膚科をご活用ください。

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監修医師

立花 義浩

資格
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
麻酔科標榜医
日本医師会産業医
日本体育協会スポーツドクター
経歴
北海道大学精神医学教室、北海道大学救急医学教室、東京慈恵医大救急医学教室にて修練を重ねた経験をもつ。また、銀座にて美容皮膚科医として、都内皮膚科クリニックにて、皮膚科医としての勤務経験をもつ。